「また、誤差か…」。深夜、閉店後の静まり返ったスーパーの事務所に、私の重いため息だけが響く。レジチーフとして、この言葉を何度口にしただろう。新人パートのAさん、学生バイトのB君。彼らが一生懸命なのはわかる。しかし、日報に並ぶ「過不足」の文字を見るたび、胃が締め付けられるような痛みが走る。
指導しても、指導しても、なぜか減らないレジ誤差。
「もっと集中して!」「焦らないで!」
朝礼で声を枯らし、終業後には一人ひとりに付きっきりで現金授受の練習をさせる。それでも、会計のたびに生じるわずかなズレが、積み重なって店舗の損失となり、私の心を蝕んでいく。
「私が悪いのか?指導の仕方が下手なのか?」
自問自答を繰り返すたび、無力感に苛まれる。レジ締めの時間、ピリピリとした空気の中で、何度も何度も現金を数え直す。指先が痺れるほど集中しても、原因不明の数円、数十円の誤差が発覚した瞬間の絶望感は、言葉にできない。「もうダメかもしれない…このままでは心が壊れる…」そんな心の声が、頭の中で木霊する夜がどれほど続いたことか。
かつて、私も同じように「人海戦術」と「精神論」でレジ誤差と戦ってきた。新人には「笑顔で、正確に、素早く!」と指導し、ベテランには「常に目を光らせて!」と檄を飛ばした。しかし、結果はいつも同じ。繁忙期の混乱、新人特有の緊張、そして何よりも「人間」である以上避けられない集中力の途切れ。どんなにマニュアルを整備し、研修を繰り返しても、ヒューマンエラーの壁はあまりにも高かった。レジ誤差報告書を作成する深夜、蛍光灯の光が目の奥に焼き付くような疲労感の中で、「なぜ私だけがこんな目に遭うんだ…」と、何度も天井を仰いだ。この徒労感から、いつ解放されるのだろうか。
そんな絶望の淵にいた私を救う光となったのが、「スマレジと自動釣銭機の連携」という情報だった。最初は半信半疑だった。「本当に数え間違いがゼロになるなんて、そんな夢みたいな話があるのか?」と。しかし、詳細を調べるうちに、その可能性に胸が高鳴った。
スマレジと自動釣銭機を連携させれば、お客様から預かった現金は機械が自動で識別し、お釣りも機械が正確に払い出す。従業員は現金を直接触れる必要がなくなるのだ。これにより、レジ操作ミスによる過不足、釣銭の渡し間違い、レジ締め時の数え間違いといった、人為的な誤差のほとんどが根絶される。
導入後、店舗の空気は一変した。
まず、レジチーフである私の精神的な負担が劇的に軽減された。毎日のレジ誤差報告に怯える必要がなくなり、夜遅くまで原因究明に頭を悩ませることもなくなった。心の奥底に沈んでいた重い石が取り除かれたような、開放感に包まれた。
新人教育も大きく変わった。現金の数え方を教える代わりに、笑顔での接客や商品の知識、お客様とのコミュニケーションといった、より本質的なサービス向上に時間を割けるようになったのだ。新人パートや学生バイトも、現金の取り扱いに不安を感じることなく、自信を持ってレジに立てるようになった。彼らの表情が明るくなり、店舗全体の雰囲気も活気づいた。
もちろん、導入コストはゼロではない。しかし、レジ誤差による損失や、チーフや従業員の疲弊を考えれば、その投資は十分に回収できると確信している。また、バーコードの読み込みミスや、お客様とのコミュニケーション不足による返品・交換といった「現金以外の誤差」は依然として存在するが、現金誤差という最大の悩みが解消されたことで、他の問題に集中して取り組む余裕が生まれた。
レジ誤差は、もはや「人為的なもの」と諦める時代ではない。スマレジと自動釣銭機の連携は、単なるツールの導入に留まらず、店舗運営そのものを変革し、そこで働く人々の未来を明るく照らす「仕組みの革新」なのだ。あなたのその疲弊は、きっと終わる。
